COLUMN
コラム
綺麗なサウナは、なぜこんなに気持ちいいのか?
― サウナ専門店や銭湯等の商業施設におけるベンチ材・スノコ材の選び方で変わるお客様に与える印象と経営コスト ―

綺麗な清潔感のあるサウナって、気持ちよくて、心からリフレッシュできますよね。
木肌が整い、黒ずみもなく、ささくれもない。
座った瞬間に「気持ちいい」と感じるあの感覚。
実はその心地よさ、
ストーブや温度設定だけでなく、木材の選び方で大きく左右されています。
今回は、サウナの中でも最も傷みやすい
ベンチ材とスノコ材に焦点を当て、
・無処理ヒノキ
・サーモウッド処理を施した「サーモひのき」
この2つを、交換頻度・ランニングコスト・休業リスク・空間価値の観点から比較します。
なぜベンチとスノコは傷みやすいのか?

サウナ室は木材にとって過酷な環境です。
・80〜100℃の高温
・湿度の急激な変化
・汗や皮脂の付着
・乾燥と吸湿の繰り返し
特にベンチ天板と床スノコは直接人体が触れ、
水分を吸収しやすいため、最も劣化が進みやすい部分です。
数年経つと、
・黒ずみ
・割れ
・毛羽立ち
・ささくれ
が目立ち始めます。
この状態が、空間全体の印象を大きく左右します。
無処理ヒノキは優秀な素材
まず前提として、ヒノキは非常に優れた木材です。
・天然の抗菌性
・耐久性が比較的高い
・香りの良さ
一般的な木材と比べれば、サウナ用途には適した材料です。
商業施設では、
3〜4年程度が交換の目安になることが多いでしょう。
さらに耐久性の低い木材を使うリスク
コスト重視でヒノキより耐久性の劣る材を使用すると、
・2〜3年で黒ずみが進行
・ささくれによる怪我のリスク
・腐朽の進行
・清潔感の低下
といった問題が起こりやすくなります。
サウナは「体験価値」の空間です。
見た目の劣化は、想像以上に印象を下げます。
「サーモひのき」とは?
サーモひのきは、ヒノキに高温熱処理(サーモウッド処理)を施した材料です。
この処理により、
・吸湿性の低減
・寸法安定性の向上
・腐朽耐性の向上
が得られます。
実務上の比較では、
無処理ヒノキ:3〜4年
サーモひのき:約10年前後
約3倍の耐久性が期待できます。

材料費は2倍。それでも高いのか?
ここで具体的に数字を見てみましょう。
ベンチ・スノコの材料費を仮に
無処理ヒノキ:50万円
サーモひのき:約100万円
とします。
確かに初期費用は2倍です。
しかし、本当に高いのでしょうか。
10年間で考える総コスト
無処理ヒノキ(3~4年周期と仮定)
材料費 50万円 × 3回 = 150万円
施工費(仮に40万円×2回)= 80万円
合計 230万円
サーモひのき(10年持続)
材料費 100万円 × 1回 = 100万円
施工費 40万円 × 1回 = 40万円
合計 140万円
この時点で90万円の差が生まれます。

見落とされがちな「休業損失」
交換工事には通常2〜4日の休業が発生します。
仮に1日売上25万円の施設で
3日休業した場合、
25万円 × 3日 = 75万円の売上減少
無処理材で2回交換すれば、
150万円の機会損失。
材料費の差より、
こちらの影響の方が大きいのです。

「綺麗な状態が続く」ことの価値

ここで、最初の問いに戻ります。
綺麗なサウナは、なぜ気持ちいいのでしょうか。
それは、
・木肌が整っている
・色味が安定している
・清潔感がある
からです。
サーモひのきは、
・黒ずみが進みにくい
・割れが出にくい
・寸法変化が少ない
ため、「新設時の印象」が長く続きます。
サウナに入った瞬間の
「わあ、きれいだな」という感覚。
この積み重ねが、リピートにつながります。
空間の印象はブランドになる
サウナは単なる設備ではありません。
ブランド体験です。
木材が傷み、黒ずみが進むと、
・古びた印象
・衛生面の不安
・満足度の低下
につながります。
逆に、美しい状態が長く続く空間は、
・安心感
・上質感
・信頼感
を生み出します。
結論:価格ではなく「時間」で選ぶ
無処理ヒノキは優れた素材です。
しかし、より長期的に見れば、
・交換回数
・施工回数
・休業回数
・空間の印象維持
を総合的に考える必要があります。
材料費が50万円か100万円か。
その差だけを見るのではなく、
10年間でどれだけ空間価値を守れるか。
綺麗な清潔感のあるサウナが長く続くこと。
それこそが、本当の意味でのコストパフォーマンスなのかもしれません。
よくある質問(FAQ)
サウナのベンチ材は何年で交換?
最も使用頻度の高い温浴施設(スーパー銭湯や銭湯)、サウナ専門店等の商業施設では、3〜5年が目安ですが、使用材により大きく変わります。
「サーモひのき」は薬剤処理された材料ですか?
いいえ。高温熱処理のみで薬剤は使用していません。
なので、薬剤や有害物質の染み出しがなくサウナ室内の空気はいつも清潔な安心安全な木材です。
初期費用が高くても採用する価値は?
交換回数・休業損失・美観維持まで含めると、十分に合理的な選択肢といえます。
サウナは、完成した瞬間がゴールではありません。
そこから何年、何十年と使われ続ける「時間の空間」です。
木材は必ず経年変化します。
問題は、劣化を重ねるのか、味わいを重ねるのか。
ベンチやスノコの材料は、単なる部材ではなく、
その施設の“印象”を決める主役のひとつです。
数年ごとに傷みを繰り返す空間か。
長く整った状態を保ち、安心感と清潔感を維持できる空間か。
その違いは、
初期コストの差ではなく、設計段階の思想の差から生まれます。
サウナは「つくる」ものではなく、
年月とともに“育てていく”空間。
交換回数、休業リスク、ランニングコスト、
そして何より、お客様が感じる心地よさ。
そのすべてを時間軸で捉えたとき、
材料選定は単なる仕様決定ではなく、
施設の未来を決める経営判断になります。
これからのサウナ設計に求められるのは、
短期的な価格比較ではなく、
10年後も胸を張って見せられる空間を想像する力。
その視点から木材を選ぶことが、
本当に価値あるサウナづくりの第一歩になるのではないでしょうか。
山一製材株式会社